決議事項 ~新株の発行1~
2015年1月7日 掲載
○新株の発行とは?
新株発行とは、発行済総株式総数を増加させる場合の株式発行を指すと言われています。新株は、会社法上、株式無償割当て(会社法185条、186条、187条)に際して発行される場合もありますが、多くの場合は資金調達の手段として用いられる募集株式の発行(会社法199条以下)です。
○募集株式の発行とは?
募集株式の発行とは、株式会社が発行する株式を引き受ける者を募集する場合、及び、株式会社が処分する自己株式を引き受ける者を募集する場合の2つを含む概念です(会社法199条1項)。募集する方法としては、一般的に株主割当て・第三者割当て・公募があるとされています。
株主割当てとは、全ての株主にその持株割合に応じて株式を割り当てる場合をいいます。第三者割当てとは、特定の第三者(既存株主でもよい)に対して株式を割り当てる場合をいいます。公募とは、不特定の者に株式引受けを勧誘して、これを割り当てる場合をいいます。
ただし、我が国で一般に公募といわれているものは、一度、証券会社が募集株式の総数を引き受けた(会社法205条)上で、証券会社が不特定の者に株式の引き受けを勧誘することです。広い意味では公募で間違いないですが、会社としては、一旦、株式を証券会社に割り当てていることから、厳密にいうと第三者割当ての一種ですので注意が必要です。
会社法では、株主割当ての場合に特別の規定(会社法202条)を置くほか、第三者割当てや公募の場合の規定として会社法199条以下で募集事項を定める等の規定を設けています。
○募集株式の発行のための手続
株式会社が募集株式の発行を行う場合には、まず募集株式について、募集事項として会社法199条1項各号に規定する一定の事項を定めなければなりません。この募集事項については、原則、株主総会の決議により定めることとなっています(会社法199条2項)が、公開会社(発行する全部又は一部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について株式会社の承認を要する旨の定款の定めのない株式会社(会社法2条5号))の場合には取締役会で決定することとなっています(会社法201条1項)。また、公開会社でない場合であっても、株主総会で委任の決議をした場合には、取締役会に募集事項の決定の委任をすることができます(会社法200条1項)。
したがって、取締役会が募集事項の決定をした場合には、その決定した募集事項については、取締役会議事録に記載する必要があります。
今回は、新株の発行について、発行の種類と募集株式の発行の手続についての概略の説明をしました。次回は、募集事項について記載例を用いながら具体的に説明したいと思います。
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