株主総会議事録の作成者 2~株主総会で取締役になった人/退いた人は?~
2013年8月20日 掲載
前回、株主総会議事録の作成者は取締役でなければならないといいました。
しかし、株主総会は、役員が選任されたり、退任する場でもあります(会社法329条1項)。
ここで新たに選ばれた取締役(新取締役)や、退任した取締役(旧取締役)に、議事録作成を任せてもよいのでしょうか?
○新取締役
新取締役は、基本的にどんな場合でも議事録を作成できます。
そもそも「株主総会議事録作成者」とは、「議事録を作成した取締役はこの人」という文字通りの意味で使われるのがほとんどで、議事録の内容を保証する役割を担うことはあまりありません(会社法施行規則72条3項)。
ですから、議事録作成時に取締役であれば作成資格が認められます。
通常、議事録は株主総会後に作成されますので、その時点で取締役に就任している新取締役は問題なく作成者になれるのです。
また、新取締役に議事録作成を認めておけば、病気や死亡などの事情により旧取締役が議事録を作成しない又はできない場合にも議事録作成に支障が出ませんし、株主や債権者の議事録閲覧を妨げることもありません。
新取締役は総会の内容を調査できる立場にありますので、議事録作成義務があるといっても過言ではないでしょう。
○旧取締役
旧取締役に関しては、作成できるか否かは場合によります。
株主総会終結前に作成する場合
先ほど、株主総会議事録は総会終結後に作成するのが一般的と述べましたが、株主総会の議事進行中に作成することも可能です。
特に定めのない限り、会社法上の任期は定時株主総会終結時までとされていますので、旧取締役が任期満了や辞任によって退く場合は、議事進行中にはまだ役職にあり、議事録作成権限・義務を負っています(ただし、株主総会前に辞任した場合は、株主総会の時点ですでに取締役ではなくなっているため、作成権限もありません)。
また、同じく職を退く方法として解任がありますが、こちらは自ら辞める辞任と違い、会社側から職を解くもので、解任と同時に旧取締役は役職に関する権利義務がなくなります。
したがって、解任された旧取締役は議事録を作成することができません。
株主総会終結後に作成する場合
総会終結後には、もう旧取締役は退任しているのですから、作成権限はないと考えるのが原則です。
とはいえ、議事録は早急に作成する必要があります。
会社法には議事録作成時期や期限についての規定はありませんが、たとえば、取締役の選任等の登記申請は総会日から2週間以内にしなければなりません(会社法915条1項)。
(※商事法務研究会の「株主総会白書(2010年版)」によれば、総会当日に議事録の作成を完了した会社は最多の23.6%、次が総会翌日の20.3%です。1週間以内に作成している会社は84.6%にものぼっています。)
こうした要請に応えるため、あらかじめ定款に「出席した取締役が議事録を作成する」旨を定めているときは、総会に出席した旧取締役に作成義務を認めてよいでしょう(会社法330条、民法654条)。
次回は、作成者が株主総会に出席していなければならないかどうかを検討します。
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