株主総会議事録の意義
2013年7月29日 掲載
前回、株主総会議事録は必ず作成せねばならないと説明しました。
しかし、議事録を作ってもあまり使い道がなければ仕方がありません。
株主総会議事録はどのような場面で使われるのでしょうか。
○株主総会議事録にはどんな意味合いがあるの?
(1)商業登記申請時の添付書類
登記する事項に関して、株主総会や種類株主総会(特定の種類の株式を持つ「種類株主」で構成される会議体)などの決議が求められる場合があります。
こんな時は、株主総会議事録を登記申請書に添付せねばなりませんが(商業登記法46条2項)、会議ではなく書面決議(株主全員が書面で提案に同意することで可決されたとみなすもの。会社法319条1項・325条)によって同意を図ったケースであれば、株主総会議事録の代わりに、書面決議に関する書面や議事録を添付すれば事足ります(商業登記法46条3項、会社法施行規則72条4項1号・95条、平成18年3月31日法務省民商第782号民事局長通達)。
(2)裁判上の証拠資料(民事訴訟法220条2号)
株主総会の議事をめぐって紛争が起きた場合、議事の内容、話し合いの経緯、成立・否決の別を明確にするには、議事録を残しておくほかありません。
特に、閲覧請求ができる議事録については、裁判所への提出を拒めないため、有力な証拠になります(民事訴訟法220条2号)。
ただし、議事録に書いてあることがそのまま全て正しいと判断されるわけではありません。議事録の記載が間違いだと証明されれば、覆すことも可能です。
※これは取締役会に関する議事録の話ですが、取締役会に出席していなかった取締役2名を、あたかも出席したように記載していた取締役会議事録に対し、信用できないとして、当取締役会が招集・決議された事実を認めなかった判例も存在します(東京地裁昭和29年8月30判決)。
(3)株主や会社債権者などに対する情報公開(議事録閲覧・謄写請求権)
株主総会議事録は、本店に10年、支店に5年の間それぞれ備え置かれ、一定の理由をもって閲覧・謄写を求めた株主や債権者、親会社社員に対して提示されます。
株主総会議事録は、会社の史実としてだけでなく、証明したい事実の裏付けとして使われたり、会社の透明性を担保するために使われたりと、思いのほか用途が広がっているようです。
備え置きや閲覧・謄写請求に関しては、また改めて説明することにしましょう。
上記内容は掲載日時点の法律に拠っています。最新の情報ではない可能性がありますのでご注意ください。