過労による自殺

2012年3月30日 掲載

 労働者が過労により精神障害に罹患して自殺するに至った場合(過労自殺)、その労働者の遺族が、使用者に対し損害賠償請求をしたり、業務上の災害として、労働基準法または労災保険法に基づく労災補償、労災保険給付を求めたりすることができるのでしょうか。

 このようなケースにおいて、判例(最判平12年3月24日。いわゆる「電通事件」)は、以下のように判断しています。
(1) 使用者は、その雇用する労働者に従事させる業務を定めてこれを管理するに際し、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負う
(2) 業務の遂行とそのうつ病り患による自殺との間に相当因果関係が認められる場合において、労働者が恒常的に著しく長時間にわたり業務に従事していること及びその健康状態が悪化していることを上司が認識しながら、その負担を軽減させるための措置を採らなかったのは、上記の健康配慮義務に違反するとして、民法715条に基づく損害賠償責任を肯定しています。
 以上のように、自殺と業務の因果関係と使用者の健康配慮義務違反が認められる場合には、使用者に対する損害賠償請求が認められるといえます。

 また、労災認定においても、厚生労働省の通達により精神障害による自殺の場合の基準が緩和されていることから労災が認められる可能性は以前より高くなっています(平成11年9月14日基発第554号・心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針)。

 使用者は労働者の週40時間を超える労働が1月あたり100時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められるときは、労働者の申出を受けて、医師による面接指導を行わなければなりません(労働安全衛生法66条の8、労働安全衛生規則52条の2)。また、時間外労働が60時間を超えた場合には、賃金の割増率が50%以上となります(労働基準法37条)。

 このように、長時間労働に対する意識が高まっていますので、従来よりもきめ細かい対応が必要となります。


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