職種の変更を伴う配置転換の拒否

2011年12月27日 掲載

 配置転換など、使用者が労働者に対して一方的に人事異動を命じることを「配転命令」といいます。配転は、労働者の生活に多大な影響を与えることが多いため、そもそも会社が配転命令を出せるのかがまず問題となります。
 いくつかの考え方がありますが、一般には、就業規則や労働契約などに「業務上必要があるときは配転を命じることがある」という条項がある場合は、労働契約上、労働者には配転に従う義務が含まれていると考えられています。
 ただし、会社との間で個別的に、職種を限定する約束がなされている場合は、転勤命令に従う必要はありません。

 次に、配転命令に根拠がある場合でも、会社が自由に配転命令を出せるわけではありません。(1)業務上の必要性があるか、(2)不当な動機はないか、(3)労働者の受ける不利益が通常甘んじるべき程度を著しく超えるものではないか、について判断し、これらに反する場合の配転命令は権利の濫用として無効とされます。

 職種が変更になる配置転換の場合、特に問題となるのが、採用時に職種を限定して採用したのかどうかが明らかでない場合です。
 職種の限定が認められた裁判例としては、事務職系の職種(医療事務)から労務職系の職種(ナースヘルパー)への配転命令について、「業務上の特段の必要性及び当該従業員を移動させるべき特段の合理性があり、かつこれらの点について十分な説明がなされたか、あるいは本人が特に同意した場合を除き」無効とした判例があります(直源会相模原南病院事件。最判平成11年6月11日)。
 これに対し、アナウンサーから別の業務への配転について、「本件労働契約において、アナウンサーとしての業務以外の職種には一切就かせないという趣旨の職種限定の合意が成立したものと認めることはできず、業務運営上必要がある場合には、個別的同意なしに職種の変更を命令する権限が、会社に留保されているものと解するのが相当である。」として有効とした判例があります(九州朝日放送事件。最判平成10年9月10日)。

 配転命令が有効とされる場合に、労働者がこれを拒否したときは、一般的には、「業務命令違反」による懲戒処分扱いとなります。けん責程度の処分では、配転命令の実効性を保てなくなるおそれがあるため、諭旨退職や懲戒解雇とする場合もあります。


上記内容は掲載日時点の法律に拠っています。最新の情報ではない可能性がありますのでご注意ください。