有給休暇の買い上げ
2011年12月27日 掲載
「年次有給休暇」とは、休日とは別に労働者にできるだけまとまった休暇を有給で与えることで、心身の疲労を回復させ、労働力の維持を図ることを目的とした制度です。
会社などの使用者は、採用の日から6カ月間継続して勤務し、かつ全労働日の8割以上出勤した労働者に対しては、少なくとも10日の年次有給休暇を与えなければなりません(労働基準法39条)。
そのため、会社が年次有給休暇を買い上げることは原則として禁止されています(昭和30年11月30日基収4718号)。年休を与える代わりに金銭を支給しても、年休を付与したことにはなりません。
しかし、以下のような場合は、例外として買い上げが認められています。
- 法定を上回る日数の年次有給休暇
会社の中には、法定の年次有給休暇の日数以上に、独自の有給休暇を定めている会社もあります。その法定日数を超過している部分であれば、買い上げることができます(昭和23年3月31日基発第513号)。 - 時効により消滅してしまった年次有給休暇
年次有給休暇の請求権は、2年で時効になります(労基法115条)。そのため、2年以上前の、時効により消滅してしまった分の年休であれば、買い上げることができます。 - 退職によって権利を行使できなかった年次有給休暇
退職予定者が、残った有給休暇をまとめて請求した場合、会社はこれを認める必要があります。年次有給休暇の取得にあたり、使用者には時季変更権が認められていますが(労基法39条4項)、退職予定日を越えて時季変更権を認めることはできないからです。
ただ、円満な引継ぎ業務ができるよう、労働者とよく話し合う中で、消化できない有給休暇を買い上げることは、違法とまでは考えられていません。
なお、例外として買い上げが認められるといっても、法律上定められた義務ではありません。どう対処するかは会社の自由です。
また、買い取り価格についても、とくに法律で定められた基準はないので、会社の規則などに従うことになります。基本的には、年次有給休暇の手当と同額であるべきと考えられますが、会社の規則に定められている買い取り価格が平均賃金に対して著しく低い場合でも、違法ではありません。
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