社内の所持品検査

2011年12月27日 掲載

 会社製品などの横流し・持ち出しを防止するため、所持品検査を行う企業があります。
 しかし、従業員の方からすれば、所持品検査は人格権やプライバシーを侵害するおそれも高く、あまり気分の良いものではありません。
 企業にとっても、プライバシー等を侵害する所持品検査は不法行為(民法709条)として損害賠償を求められる原因となるため、細心の注意が求められる厄介なものです。

 では、こうした社内の所持品検査はどのような場合に許されるのでしょうか。

 基本的には、就業規則の服務規程に所持品検査が記されていれば、従業員にはこれを守る義務があります。
 企業と労務提供の契約を交わしている以上、企業秩序(服務規律を含む)という事業運営に不可欠な事項の維持に協力すべきだからです。
 また、企業秩序違反者を懲戒処分にすることも可能です。

 ただ、所持品検査は無制限に許されるわけではありません。
 従業員が企業秩序に従うべきなのは企業運営上必要かつ合理的な範囲だけであって、人格権やプライバシーを侵害するような行き過ぎた支配は認められないのです。

 この点、企業にはとても厳しい基準が求められています。
 なにしろ、所持品検査が同業他社で実施されていても、就業規則に定めを置き、労働組合や従業員の同意を得ていても、それだけではだめなのです。
 加えて

  1. 検査を必要とする合理的理由
  2. 検査が妥当な方法と程度で行われること
  3. 制度として従業員に対し画一的に実施されていること
  4. 就業規則や明示の根拠に基づいていること
    (西日本鉄道事件、最高裁昭和43年8月2日判決)

 という4要件が満たされていなければいけません。

 上記の基準を判断する際は「羞恥心、屈辱感」がポイントとなります。
 所持品検査の際、威嚇的言動等で人としての尊厳を傷つけたり、本人に必要以上に屈辱感や羞恥心を与えたりしない(女性従業員の検査には女性検査員を配置するなど)よう、企業が十分に配慮したかが検討されます。

 ただ、基準を満たして所持品検査の適法性が認められても、懲戒処分を無効にされてしまう場合もあります。
 非協力的な従業員はまず説得して理解や自発的協力を仰ぎ、懲戒処分はできるだけ避けるという姿勢も必要なようです。


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